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サイレントウォーター

Silent Waters *9

【2004年、高校生時代、戸塚】
ニンテンドーDSはみんな持っていた。家にPS2があるやつもいっぱいいた。でも、自分のPCを持ってるやつはまだ少なかった。オンラインゲームが楽しそうだった。GameMakerやヤマハのVOCALOIDなんかもこれから流行るのかもしれない。
コンビニとファミレスでバイトして貯めた金が、どうにか中古PCに手が届く額になっていた。
ソフトを購入する資金までは当然なかった。インターネットはまだヤバい、ちょっと危ない空間だった。戸塚は独学でプログラミングの知識を積み上げていった。一回ボコボコにされてから遠ざかっていた2ちゃんねるみたいな掲示板を自分で立ち上げようと思った。広告収入で収益化するのは、その数年後だった。

掲示板で知り合った仲間の伝手で大手バイオ開発の二次受託企業の広報に関わって以来、戸塚は積極的に人脈を拡げていった。大学では有機化学を専攻したが、すぐに分子生物学に関心が移った。学生時代に起業できたのには、一つに脱サラして加わってくれた技術者の専門知識もあるが、もう一つはかなり巨額な相当怪しい融資があった。戸塚の最も才能に恵まれた分野はむしろ人脈の開拓だったのかもしれない。主業務となる現場の実験屋集めよりも、「裏工作」に奔走する戸塚のサポートができる信頼のおける人材を確保することが難業だった。許認可がらみも含め、そうした雑用が多く、しかも事業の成否を左右するのは案外そっちの方だった。

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